2020.7.10 サポート豆知識

在宅コールセンターを実現するには?3大課題の対応方法や必要なシステムを解説

在宅コールセンターを表現する画像

在宅コールセンターについては、これまでにも災害時におけるBCP対策や繁忙時の雇用対策、優秀なスタッフの離反防止など様々なメリットが語られてきましたが、コロナ禍以前の世の中ではほとんどの企業で導入には至りませんでした。
しかし、コロナ禍であらゆる企業活動が制限される中、一部または全てのカスタマーサポート業務でリモートワークを実施する企業が急激に増加しています。
本記事では、在宅コールセンターを実現するうえでよく議論される3大課題の対応方法から必要になるシステムまでご紹介いたします。

▼参考記事
【実態調査】リモート・テレワークはカスタマーサポートでも進んでいるのか?

在宅コールセンターが再検討されている4つの理由

在宅コールセンターが注目される理由としては、先に挙げたメリットがそのまま当てはまります。要するに、コロナ禍で出勤できるスタッフを減らさざるを得ない中、どうやってこれまでに達成していた業務品質を担保していくのか、という瀬戸際の状況の中で注目されてきているといえます。

今回のようなパンデミックだけでなく、今後30年以内に起きると想定されている南海トラフ地震や首都直下地震など警戒されている災害も多く、大地震以外にもここ数年の台風上陸では各地に大きな被害をもたらしている状況です。今回のコロナ禍を切り抜けるだけでなく、今後起きうる国内での災害対策としても、在宅コールセンターの導入を改めて考えるべき時代に来ています。

(1) BCP対策として有効

先にお話した通り、BCPの観点でも在宅コールセンターは非常に有効です。
例えば、大きな台風が近隣に上陸したとします。上陸した日は電車やバスをはじめとする交通機関がマヒし、コールセンターに出勤できるスタッフはごくわずかという状況です。
従来型のコールセンターにおけるBCP対策であれば、予め必要最低限のスタッフをコールセンター近くのホテルに宿泊させ、台風上陸の当日であっても問題なく出勤できる体制を整えます。加えて、複数のセンターを運営している企業であれば台風の影響の少ないほかの地方センターに、限定的なスキルやFAQのみで対応できる一次受付だけを切り出して対応してもらえるよう、事前調整をすることで最低限の窓口稼働が担保されます。

このような従来型コールセンターによるBCP対策の場合、次のような影響が想定されます。

運営窓口への影響

 ・交通機関への影響による出勤不能なスタッフの発生
 ・応対可能席数減にともなうCPH(1時間あたりの対応可能件数)悪化
 ・処理しきれなかったインシデントへのスナッチ(折り返し)対応の発生
 ・限定的なスキルで対応しなければならない応援センターによる満足度悪化

その他の影響

 ・宿泊費用や発生するイレギュラーなアウトバウンド通信費などの追加コスト
 ・応援センター自体の人的リソース調整等、運営する窓口への影響

上記は支援してくれる他の拠点があることを前提として挙げていますが、そういった支援センターがない場合はすべての影響をそのコールセンターで被ることになります。既にご経験なされた方も多いかと思いますが、その影響は甚大です。

対して、在宅コールセンターの場合ですが、これらの影響のほとんどを吸収可能です。
上記のような影響は、出勤可能なスタッフが減ることに起因した要素がほとんどであるため、そもそも出勤する必要のない在宅コールセンターであれば、影響を軽微に抑えることができます。災害がスタッフの家や家族、通信網をはじめとするライフラインに影響のない地域であれば、自宅で業務を続けることができるのです。

これは特に、CPHが売上に直結する受注窓口や、重要な施設の問合せ窓口など、一刻を争う製品やサービスを扱う窓口ほど、このメリットは非常に大きなものとなります。また、各地に点在するオペレーターの存在そのものがコールセンターのBCP対策という観点から大きな支えとなるでしょう。

(2) オペレーターの人材不足を解決

在宅コールセンターの仕組みはコールセンターで昨今問題視されている人材の獲得難にも影響をもたらす可能性があります。これは、在宅コールセンターを実現できるクラウドシステムが整っていれば、場所を問わず業務に着手できるためです。今までコールセンター拠点の近くに住む人材を獲得していたのが、在宅コールセンターになった途端に場所を問わず採用活動を行うことができるようになります。

在宅コールセンターの普及はスタッフ側にとっても恩恵のある事です。例えば、家事や育児、介護などの問題で家を離れることができないような人でも、在宅オペレーターとして活躍することが可能となります。スタッフごとのライフサイクルに合わせた業務の実施が可能になり、コールセンターで従事可能な人材を増やすことにつながります。
 

(3) 人的リソースの調整が容易

在宅オペレーターの増加は、コールセンターにとって人的リソースの調整を容易にするメリットをもたらします。在宅オペレーターはその働き方の特性上、「いつどれだけの業務量で仕事をしているか」といった労務管理が欠かせません。これは従来型のコールセンターには無かった管理工数の増加を意味しますが、一方で契約形態の柔軟性を高めることにもつながります。
 
在宅オペレーターは必ずしも1日8時間単位での労働契約である必要はありません。例えばオペレーターの望む限られた時間帯でのシフト(時給)契約も可能ですし、完了インシデント件数毎の単価契約とすることも可能となります。

 ※「完了インシデント件数毎の単価契約」の場合、スタッフは個人事業主としての契約となる可能性があるため、法務部門への確認が必要になります。

また上記のような採用形態は、労働市場での副業オペレーター増加にもつながり、コールセンターでのより柔軟な人的リソース調整を実現することが可能となります。例えば、コールセンター全体で、通常時の対応件数を支えるスタッフは常勤スタッフとし、スポットで繁忙期を支えるスタッフはシフト契約にする等、インシデント完了件数に応じた単価契約のスタッフを充てて、人件費の効率化を図ることも実現可能です。

(4) ファシリティ費用の効率化

在宅コールセンターの実現は、コールセンターのファシリティコストにも大きな影響を及ぼします。通常、コールセンターを増床しようとすると、当然必要なスペースを確保しなければなりません。時には新しいオフィススペースの確保であったり、増えた席数分だけPCを確保したり、またセキュリティを確保するためのパーティション工事をしたり等々、イニシャルで大規模な工事費用が発生しランニングでも家賃が増額となるケースは少なくありません。

在宅コールセンターでは、スタッフ自身が個々に用意したスペースでの業務となるので、ファシリティコストを意識することなく作業席数を調整することが可能となります。また、通信に必要な回線インフラもスタッフの自宅回線を利用することが可能となるため、必要なファシリティリソースを必要なタイミングで迅速に準備可能なコールセンターの実現にもつながります。 

在宅コールセンター導入の3大課題と対応方法

さて、ここまでは在宅コールセンター導入のメリットを中心にお伝えしてきましたが、導入には当然課題や問題点も存在します。ここでは代表的な3大課題についてお話したいと思います。

在宅コールセンターの3大課題を提示した画像

(1) セキュリティリスクの課題

本記事冒頭で、「多くの企業が検討されたにも関わらず、ほとんどの企業で導入に至っていない」とお話をさせて頂きましたが、その多くの理由はセキュリティリスクに絡むものです。コールセンターですから、窓口によっては顧客の個人情報を参照することもあり、その情報の取り扱いは厳重に管理する必要があります。在宅コールセンターにシフトしたからといってそのセキュリティレベルは下げることはできません。
しかし、セキュリティに関連するシステムの向上はここ数年で大幅に進展しており、在宅コールセンターに限らず多くの企業で活用が進んでいます

実際の他社事例をご紹介しますと、とあるコールセンターの現場では、在宅オペレーターにローカル保存やコピーのできない専用PCを配布のうえでVPN通信を行い、WEBカメラやチャットを通じた業務管理を実施することで、セキュリティを担保したセンター運営に取り組んでいるというケースがあります。業務専用PCでチャット画面を開きながらSVとコミュニケーションをとりつつ、顧客情報を閲覧するCRMと、クラウド上で構築されたコールセンターシステム(クラウドPBX)を活用して発着信する形で運営されています。この場合、SVが対応中の音声をモニタリングすることも可能です。

他にも、企業によっては外出の多い営業職でシンクライアントPCを活用し、ローカルに情報を保存せず常にオンライン上で業務をしている例もあります。営業職は顧客の機密情報を扱うことが多く、その情報は厳密に管理されていますが、パスワードだけでなく指紋認証や顔認証等を活用するなどして、万が一紛失したり盗難にあったりした場合でも情報流出を防げるよう担保しています。

このように現在では在宅コールセンターだけでなく、外出先の営業マンにとっても安心して業務に従事できるシステムが普及しつつあります。在宅での環境構築の条件やオペレーションのルール決めを行い、万が一の際のインシデント対応方法もFAQ等でマニュアル化しておく事で従来型のコールセンターと同等のセキュリティレベルを実現することが可能になってきています。

(2) 応対品質低下への懸念

そして次に懸念されるのが対応品質の低下です。稼働中の窓口やスタッフについてはそれほど大きな品質の低下の懸念はないものと思ってよいでしょう。在宅コールセンターはそのシステム上、詳細な稼働リソースの見える化が前提となるため、それぞれのスタッフの通話時間や対応件数、休憩時間などあらゆるステータスの管理が可能となり必要な対策が取りやすくなるためです。

一方で、懸念すべきところとしては新人オペレーターや新規スキルの育成です。在宅コールセンターという特性上、直接顔を合わせてのディスカッションやOJT、座学教育は実施しにくく、オペレーター本人の理解度や課題が見えにくくなります。この部分についてはまだ各社、在宅コールセンターの運営ノウハウに乏しい部分もあるため試行錯誤を繰り返している状況です。
この教育の部分については、テレビ会議での座学と社内FAQシステムの充実、QA担当者によるリアルタイムモニタリングをこれまで以上の頻度で行うことにより、対応しているケースが多いようです。
 
また在宅コールセンターでは、必要な情報をタイムリー且つ確実に共有するといった取り組みも重要です。せっかく社内FAQを充実させても見ていない人がいたのでは応対品質にも大きく影響するためです。こういった情報共有に対する取り組みはセンター内共通のグループウェアを活用したり、HELIX MOTION社の「MyKOA」のようなセンター内周知に特化したシステムを活用するなどして、品質担保の一助としているケースもあります。
 

(3) コミュニケーション不足の不安

3つ目の課題として挙げるのはコミュニケーション不足です。応対品質に関わる業務上のコミュニケーションも重要ですが、従業員満足度対策としてのコミュニケーションも重要になります。
在宅コールセンターでは、どうしてもスタッフ同士のコミュニケーションが不足しがちになり、それによって従業員満足度が悪化し、退職につながるといった問題も起こりかねません。センター内のコミュニケーションを活性化し、スタッフの心のケアや、帰属意識を高めるといったコミュニケーション施策にも取り組んでいかねばなりません。
 
在宅コールセンターですので直接会って何かをする事はできませんが、イレギュラーが発生した際にSVが直接テレビ電話やチャットで声をかけたり、定期的なテレビ会議での打合せを行うことも効果的です。そして必ずスタッフに対してねぎらいの言葉をかけることも必要です。
オウケイウェイヴでは「OKWAVE GRATICA」というオンラインでサンクスカードを送り合える無料サービスも提供しています。スタッフ同士で手軽に送りあえるオンラインのサンクスカードはセンター内の仲間意識を醸成させる事にもつながり、コミュニケーションを活性化させる一助にもなります。テレビ電話ばかりではなく、サンクスカードも併せて運用する事によってスタッフの心のケアにもつながります。

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在宅コールセンターに必要なシステムとは

それでは最後に、実際に在宅コールセンターを立ち上げるのに必要なシステムについて挙げてみたいと思います。

(1) クラウド型CRM

コールセンターの生命線ともいえるCRM。CRMとはセンター内で顧客情報を一元管理するためのシステムです。これまではセンター内での情報管理で済んでいましたが、オペレーターが国内各地に点在する在宅コールセンターの場合は、スタッフ間の情報連携の観点からもクラウド対応である必要があります。
もし既に導入済みのCRMがある場合にはクラウドに対応できるかどうか、新規に導入するならば現在手元にあるデータをインポートできるかその他のクラウドシステムと連携できるか等をよく確認したうえで選定しましょう。

(2) デスクトップ仮想化(VDI)に対応するPC

在宅オペレーターのセキュリティを担保する上で必須ともいえるシステムです。このシステムは普段の業務に必要なPC環境をサーバー上で構築するもので、シンクライアント環境とも呼ばれています。シンクライアントに対応するPCを在宅オペレーター向けに準備することで、在宅オペレーターは業務上発生する全ての情報のやり取りをオンライン上で行う事が可能となり、堅牢な情報セキュリティ対策を講ずることが出来ます。

(3) VPN(Virtual Private Network)

在宅コールセンターでの情報セキュリティ対策としてVPN環境の構築も必要です。複数拠点を持つコールセンターなど、社内の拠点間接続にVPNを利用している企業は多くありますが、在宅コールセンターの体制構築では、在宅オペレーターの利用する端末から社内情報へのアクセスを実現するクラウド型リモートアクセスVPNが必要となります。通信回線を通じて顧客情報を扱うという業務の性質上、VPNはセキュリティ対策の必須項目です。

(4) クラウドPBX

通常のPBXは社内向けに特化した電話交換機として利用するものですが、クラウドPBXはインターネットを介したPBX環境を構築する事が可能です。クラウドPBXを利用することによって、在宅オペレーターは社内のコールセンターにいるのと同じように顧客からの電話を受発信することができるようになります。また、通常のオフィスやコールセンターのように在宅オペレーター同士で内線通話する事も可能となり、SVやQA担当者による品質管理の観点でも必須のシステムといえます。

(5) クラウドCTI

クラウドPBXを導入したら連携するクラウドCTIの導入も必要です。導入するクラウドCTIはシンクライアント端末上で動作するクラウドPBXやCRMとの連携を前提に選定する必要があります。これらの連携は、顧客からの着信時に即座に顧客情報へアクセスするためにも欠かせません。また、クラウドCTIの導入によって在宅勤務者の応対品質管理や稼働状況の把握にもつながります。

(6) FAQ

在宅オペレーターが個々でサポート業務をしていくうえで、これまで以上にオペレーター自身の自己解決力が求められる環境となります。そのためには、オペレーター向けFAQの充実が必要です。在宅コールセンターを立ち上げる際に、既存のFAQを見直し、必要に応じてブラッシュアップを行いましょう。
また、併せて顧客向けFAQの見直しも行うことでコールセンターに問い合わせる前に自己解決を促すことにもつながります。なお、呼数削減の観点でもFAQの充実化に取り組むべきです。

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まとめ:現状業務の棚卸しから始めよう

在宅コールセンターのメリットや導入の課題、実現する上で必要なシステムについてお話をさせていただきました。在宅コールセンターの運営には従来型コールセンターとは違ったシステム環境や社内のルール作り、在宅オペレーターの支援環境が必要です。
現状のコールセンター業務を改めて棚卸し、在宅コールセンターでどこまで実現可能なのか、どこを変えるべきなのか、改めて検証するところから始めてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者

片岡 利之│FAQ活用トレーニング講師

片岡 利之│FAQ活用トレーニング講師

コールセンターアウトソーサーにて、顧客満足度向上を支援する新規サービスの企画、営業、コールセンター運用改善、窓口の立上げ支援などを経験後、現在は株式会社オウケイウェイヴのカスタマーサクセス部門に在籍。 FAQソリューションの利活用を推進するトレーニング等を担当し、FAQに関する知識やノウハウの伝達を目的とした活動をしている。

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